面白い顔のヤツが空いてるぞ!【サツキ(前編)】

『平成デモクラシー』結成

――養成所時代はどんなコンビだったんですか?

ムネタ:『平成デモクラシー』っていうコンビ名で、漫才やってました。

――漫才のみ?

ムネタ:コントもやりましたけど、講師の方に「演技が下手すぎるからやめたほうがいい」って言われて。

のりや:(笑)

――キャラクターは今と変わらない?

ムネタ:全然違うキャラでした。髪の毛も遊ばせてましたし。『モテたい』がすっごい出てました(笑)。

――芸風は?

ムネタ:僕がツッコミっていうか……。ツッコミじゃなくて『ヒガミ』みたいな。相方がイケメンなんで。

相方が霊に取り憑かれる

――その後、トリオになるんですよね。

ムネタ:はい。養成所の同期が入ってトリオになったんですけど、そいつが心霊スポットに行くのが大好きで。あるときから霊に取り憑かれてしまったっぽくて……。

――え?

ムネタ:体中痛いし、右肩は重いし、ずっと口から血が出るしってなって……。

――ええ……。

ムネタ:最初は普通のヤツだったんですけど、だんだん素行も悪くなってきちゃって。

――どのくらいの期間でそうなっちゃったんですか?

ムネタ:半年くらいですかね? そいつが心霊スポットに行き過ぎてて、どのタイミングで取り憑かれちゃったかよくわからないんですよねえ……。

のりや:何この話(苦笑)?

『こぶし』を解散、ピンでの大失態

――のりやさんの話に戻りますが、サンミュージックに所属して5、6年後、『こぶし』は解散してしまいます。

のりや:最後の1年くらいはうまくいってなくて。相方が「売れたいって思わなくなってきた」って言うんで……。ちょうど30歳になるくらいですね。

――いろいろ考える年齢になりますよね。

のりや:じゃあしょうがないなあって。そのとき僕も辞めようと思ったんですけど、たまたまピンでオーディションが残ってて。

――何のオーディションだったんですか?

のりや:テレビなんですけど、有吉さんと一緒にMCをやるっていう……。

――すごいオーディションですね。

のりや:それがダメだったら辞めようと思ってたんです。でも結局それが受かって。

――おお!

のりや:有吉さんをはじめとした売れっ子たちに、僕みたいな無名の芸人入れてフリートークしたらどうなるかっていう番組だったんですけど、まったく何もできなくて……。

――解散したばかりですから、ネタがあるわけでもない。

のりや:そうなんです。それなのに準備を怠ってました。今考えたら恐ろしい状況なんですけど、できる気がしちゃって。

――(笑)

のりや:マネージャーが、番組前に「のりやをよろしくお願いします」って各所に頭下げて回っててくれたって聞いて。それもあって……。終わった直後に、自分のダメさ加減に号泣しちゃいました。

――つらいですね。

のりや:たまたま竹山さんも別番組で同じスタジオにいらっしゃってて。見ててくれたんです。そしたらひとこと「ダメだったな」って(笑)。

ムネタ:うわ~(笑)。

のりや:解散もしてるし、辞めるつもりで臨んだ大きな仕事がそんななって。普通「この仕事で辞めるつもりでした」って、サクセスストーリーの冒頭じゃないですか。世の中には、そうじゃないのもあるんですよ(笑)!

――(笑)

のりや:あのとき、いろんな人にいろんなこと言われすぎて……。ツラすぎてもう記憶がないです(笑)。

――最後の仕事をまっとうしたのりやさんは、その後どうなるんですか?

のりや:本来なら、事務所をクビになってもおかしくなかったんですけど、リッキーさんが「お前はなんかあるかもしれないから、特別に残してやる」って言ってくれて。

――2人ともリッキーさんに救われているんですね。

のりや:そうなんです。一生頭が上がらないです(笑)。

顔が面白いヤツと組みたい

――ムネタさんの平成デモクラシーも解散してしまうんですよね。

ムネタ:事務所に所属して3年くらい経ったころですかね。相方がやる気なくなっちゃって……。「楽屋でみんなが話してるなかに行きたくない」って言われて。

――それはどういうことなんですか?

ムネタ:みんなが「売れたい」とか「売れたら」とか話すじゃないですか。それにだんだん温度差を感じてしまうようになっちゃったらしく。

――それで解散することに。

ムネタ:はい。そしたら、こぶしさんも同時期に解散して。周りから「今、のりやさんが空いてるぞ」って。「顔が面白いヤツと組みたいって言ってたから、お前チャンスだぞ」って言われたんです。

――それは事実なんですか(笑)?

のりや:事実です(笑)。

――それで2人は組むことに。

のりや:はい。僕も「顔が面白いヤツが空いたぞ」って話を聞いて(笑)。連絡取り合って、2人で飲みに行ったんです。で、コンビをちゃんと組むっていう感じではなく、1回、M-1に出てみてもいいかなくらいの話になって。

――なるほど。

のりや:とにかく、顔が面白いからいいかなって(笑)。

それまでの2人の関係

――それまで仲は良かったんですか?

のりや:そうでもないです。たまにライブで会う後輩の1人です。あいさつする程度の。

――芸歴はどのくらい違うんですか?

のりや:実はほとんど同期くらいなんですよ。年も1個しか変わらないし。

ムネタ:いや、2、3年は違います。

のりや:すぐ下に来ようとするんですよ(笑)。

――年数で言うと?

のりや:僕は11年です。

ムネタ:僕は6年ですね。

――ムネタさんは養成所に4年行っているから、そこからカウントしたら都合10年くらいになるんですね。

のりや:そうです。だからほとんど同期で……。

ムネタ:いやいや、全然違いますって。

――それまで互いのコンビを面白いと思っていたんですか?

ムネタ:面白いと思ってました。そりゃもちろん、思ってますよ!

のりや:正直に言ってええんやで(笑)。

――のりやさんから見た平成デモクラシーは?

のりや:ネタほとんど見たことなくて、実はあまり印象にないんですよね。

ムネタ:いやいや。1回すごい褒めてくれたことがあって。のりやさんは覚えてないかもしれないですけど。

のりや:え? そんなことあった? 何のネタ?

ムネタ:下ネタだったんですけど……。

のりや:下ネタだったからやろな(笑)。

試しにM-1グランプリに出場

のりや:2人で『M-1グランプリ2016』に出場しました。

――結果は?

のりや:1回戦はなんとか受かったんですけど、2回戦で落ちちゃいました。

――どんなネタだったんですか?

のりや:お試しってこともあったんで、こぶし時代の漫才を流用して……。こいつがツッコミだったんですけど、やらせてみたら、めっちゃ下手くそだったんですよ。

――(笑)

ムネタ:ツッコミ下手って。今までそんなこと言われたことなかったんですよ。ビックリしました。なんで今まで誰も言ってくれなかったんだろうって思いましたよ。

のりや:いちいち言わんやろ(笑)。

ムネタ:TOKYO☆笑BIZは何を教えてくれてたんだと。コントの演技が下手なのは教えてくれても、ツッコミが下手ってのは教えてくれなかったんですよ。教えてくれないと、できてるって思っちゃうから!

のりや:なんでもかんでも下手っていったら、やれることなくなちゃうから(笑)。

――(笑)

のりや:それで、ボケとツッコミを変えて、今の形に近付いていきました。

モテるは諦めた

のりや:こいつ、どうやっても言葉に感情が乗らないんですよ。普段笑わないし。喜怒哀楽がホントなくて。どんどん腹立ってきて。

――(笑)

のりや:最初は、「もっと感情乗せて喋れ」って言って、やらそうとしていたんですけど。できないから逆にそれで行くしかないってなって。

――それで、今の形に近付いていくんですね。

のりや:そのとき着てるシャツも似合ってないなってなって、衣装も変えました。

ムネタ:普通のシャツだったんですけど……。

――普通のシャツが似合わないって、レアですけどね(笑)。

のりや:で、今着てる襟のないシャツを下北で見つけて。「これや!」ってなって。

ムネタ:バンドカラーっていうんですけと……。

のりや:着てもらったら周りの芸人もそれだけで笑ってたんで。手応えを感じて。

――やはり『似合ってる』って大事ですからね。

のりや:ネタのつかみで「笑わせたい、笑いたい、依存し合いましょう」って言うのがあるんですけど、それがある日『バーン!』ってウケて。そこから今の形が始まりました。

――最初から計算されていたわけではなく、試しながらやっていったのがハマった。

のりや:そうですね。

――この芸風では、当初の目的の『モテる』ということから遠そうな気もしますが……。

ムネタ:モテるは、諦めましたね……。


エリートコース、事務所消滅、逆転の単独ライブ、解散、そして辞める寸前まで……、ドラマのようなストーリーを持つのりやさん。一方、養成所に4年通い続けた異質の経歴を持つムネタさん。そんな2人を結びつけたのは『タイミング』と『面白い顔』だった! サツキのコーヒーブレイク・インタビュー、後編へ続く!(4月24日更新予定)