半分秋田・半分東京、アウェイなことがホームのスタイル【ねじ(前編)】

(リモートインタビュー キャプチャー画像)

『ねじ』に改名

――名前も『ねじ』になります。

ササキ:『三日月シュガー』って、自分たちで付けといてちょっと恥ずかしかったんです。それで『ゆず』みたいなコンビ名がいいなって思いまして。

せじも:それで考えたのが、漢字一文字で『鰐』でした。

ササキ:マネージャーに反対されて。「読みにくいからせめてひらがなにしろ」ってことだったんですけど。ひらがなで『わに』は違うなって思って。

せじも:『わに』は漢字でしょ!

ササキ:ひらがなったら『さめ』かな、みたいな話があって。

――謎のこだわりですが……(笑)。

ササキ:2文字で何がいいかなって思ってたら『ねじ』っていう言葉が出てきて。『ねじ』は物作るのにすごく大事なものだし。『ねじがバカになる』とか『ねじがハマる』とか、お笑い的な言葉としてもなんかいいなってなって。『ねじ』に決めて、後日せじもさんに「『ねじ』になりました」って報告しました。

せじも:そうなんですよ。勝手に決めて。どういうことなんですか(笑)!

――エゴサーチには引っかかりにくそうです。

ササキ:そうなんですよ。「ナントカだった『ね。じ』ゃあ……」みたいなのにも引っかかちゃいますし。でも、僕自身、基本エゴサーチ自体しないんで、あまり気になったことないんですよね。

せじも:僕は『ねじ 秋田』とか『ねじ (出たライブの名前)』とかで調べることはあります。

ネタ作りは時間を決めて

――ネタはどのように作っているんですか?

ササキ:まず、せじもが設定持ってきてくれるんです。「それどうやってコントでやるの?」みたいなのもたまにあるんですけど。僕がそれを聞いて、即興でその場で落語みたいな感じで喋り始めてみて、ノッてくるものがあればせじもも入ってきて、って流れですね。

せじも:ネタ作りのルールとして『絶対2時間で終わらせる』ってのがあります。

――それはなぜ?

ササキ:悩みすぎて良かった試しがないんですよね。すっごい考えて出来たネタってあんまり良くないんですよね。

――わかります。

ササキ:だから会う時間と解散する時間を先に決めてますね。

せじも:意外と終わったあとに思いつくパターンもありますけどね。

ササキ:「あ~、時間か~。今日は残念~!」みたいな日もあります。

――後ろ髪引かれてもやめちゃうんですね。

ササキ:やめますね。

せじも:ちょっと盛り上がりそうになってもやめます(笑)。

秋田弁のネタができたきっかけ

ササキ:アナ学時代から、うちのじいちゃんのエピソードとかがやらたウケるんですよね。でもそれはネタとは関係ないって僕のなかの意識だったんですけど、周りからは「それやれば?」ってずっと言われていたんですよ。

――はい。

ササキ:で、ショートネタブームも来て。「短いネタ、短いネタ」って言われるなかで「なんもねーよ!」ってなかで、ヤケクソで作ったのが最初ですね。

――そうなんですね。

ササキ:最初イヤだったんですよね~。

せじも:イヤだったね~。

ササキ:秋田がイヤで東京に出てきたってのがあったので、なんで東京に出てきてまでまた秋田のことをやらなきゃいけないんだって。そうじゃない、普通のコントを評価して欲しいってのはありました。

――なるほど。

ササキ:でもだんだん……、やっぱり年ですよね。30歳くらいになってくると、久々に秋田帰ったら「めっちゃ秋田いいじゃん」って思い始めて。全然景色が変わって見えました。

せじも:こんなにいいところだったんだって。

ササキ:秋田を好きになって、それで秋田弁のネタもちゃんと好きになってきました。

――アニメやヒットソングを秋田弁に翻訳する形ですが、1番やっているのは……?

ササキ:『アルプスの少女ハイジ』ですね。あれの「ひじゃがぶがじゃめぐ」っていうくだりがあって……。「膝がガクガクしてる」っていう意味なんですけど。

――(笑)

ササキ:これが思いの外、秋田の人に刺さって。「言わないけどわかる!」っていうちょうどいいラインだったんですよね。おじいちゃんとかだったら言いそうなくらいの。で、秋田帰っても「ひじゃがぶの人ですよね?」って声かけられます。

せじも:『ひじゃがぶ』は僕らの代名詞ですから(笑)。

秋田弁のネタの苦労やこだわりは?

せじも:アニメの名シーンって、意外と秋田弁にしづらいっていうのはあります。

――それはなぜ?

せじも:固有名詞が多すぎると、翻訳しようがないんですよ。

ササキ:『ガンダム』は『ガンダム』ですし『海賊王』は『海賊王』なんですよね。

――なるほど(笑)。

せじも:もっとふんわりした台詞だったらいいのにって思うんですけど、ふんわりした台詞って名シーンになりにくいんですよね。

――こだわりは?

ササキ:ウソだけは絶対つかないようにしようと思ってます。秋田の人にはバレちゃいますし。「多少ウソでも面白けりゃいいじゃん」みたいなことを言われることもあるんですけど。

――大事なことですよね。

せじも:あと喋る速度ですね。実は普通の秋田弁よりちょっと速く喋ってるんですよ。

――え? そうなんですか?

せじも:だから秋田のお客さんに言われますね。「もうちょっとゆっくり喋ってくれたら聞けんだけどなー」って(笑)。

ササキ:何言ってるかわかったら「何が面白いんだ」ってなりますからね(笑)。

――「え? 今なんて言ったの?」くらいがやっぱり面白いですからね。

ササキ:ここ何年かは『キングオブコント』も秋田弁のネタで出るようにしてますけど……。普通のコントでやってたときに比べて、あんまり成績は良くないんですよね。

――確かに、笑いがあっても『コントの醍醐味』とは少し違う部分もあるかもしれません。

ササキ:でも、今後もなるべく秋田弁で挑戦していきたいと思ってます。

秋田に住んじゃえ!

――去年あたりからよく秋田にも行っている印象です。

ササキ:そうなんです。今年は新型コロナの影響で断念している部分もあるんですけど……。

――きっかけは?

ササキ:秋田弁のネタが、YouTubeに良くない方法でアップロードされてて。それが秋田でバズって。急に秋田から仕事が増えた時期があったんですよ。そしたら、いつのまにか秋田の人たちが僕らのこと認知してて。

――違法アップロードですから、複雑なところではありますが……。

せじも:そうなんですよね。

ササキ:それで「もっと、ここ固めない?」って話になり。秋田弁のネタを代名詞にしていくのであれば『秋田の人は100%知っている』っていう代名詞が欲しいと思ったんです。

――なるほど。

ササキ:そのために何がいいのかなと思ったときに『住んじゃうのがいい!』ってなったんです。とりあえず期間限定で2ヶ月くらいってことで。2019年の9月と10月は秋田に住みました。

――住む場所はあったんですか?

せじも:レオパレス借りました。

ササキ:で、せっかく住むんだったら毎日何かやろうってことで。その2ヶ月間、秋田のどこでもライブやりますっていうことにして。知ってもらうために無料お試し期間っていう感じですよね。

――先行投資ですね。

ササキ:はい。そしたらそれが思いの外反響があって。最終的には秋田で単独ライブもやったんですけど。1008人パンパンの満員になりました。

――すごい!

ササキ:自分たちのやるべきことも見えてきて。秋田で活動している芸人さんもいるんですけど、その人たちと僕らの違いって何かなってなったときに。『東京から来てる』ってのが色だなと思ったんです。東京にいるときは『秋田から来てる』ってのが色で、秋田にいるときは『東京から来てる』っていう感じで。

――常にアウェイ(笑)。

せじも:そうそう(笑)。最近「あれ? もう秋田にいるんでしたっけ?」とかよく言われます(笑)。

秋田での生活

――2ヶ月間、秋田と東京の2重生活でした。けっこうお金もかかるのでは?

ササキ:それは僕らも見通しが甘い部分もあって。まず、秋田のレオパレスの家賃があればいいのかなと思っていたんです。それを2人で貯金して行こうと思ってたんですけど……。やっぱりその他にもいろいろお金かかるんですよね。東京の家賃も維持しなきゃいけないし(笑)。

――確かに(笑)。

ササキ:それでクラウドファンディングしたんですよ。そしたらもちろん、リターンをしなきゃいけないんですけど、企画の内容的にリターンできるものって当面なかったんですよね。秋田に2ヶ月住んで何がお返しできるんだろう?って。

――商品を作ったりするわけじゃないですからね。

ササキ:じゃあ単独ライブやろうってことになって。単独ライブも無料なんですけど『席を確保する』とか『グッズを付ける』とかそういう風にしようってなったら、余計お金がかかるようになって。

――なるほど。

せじも:目標金額120万円で、結果、150万円くらい集まりました。

ササキ:本当ありがたい話です。

せじも:いやでも、怖かったですね~。

――活動内容は?

せじも:最初にYouTubeで『行きます』宣言した時点で、2ヶ月の半分、30日分くらいイベントが埋まったんです。

――すごいですね。

せじも:そこから秋田の横の繋がりだったりとか、新聞の取材とか受けたりして、どんどんどんどん広がってって。2ヶ月ほぼほぼ休みなしで動いてました。

ササキ:ステージだけで60ステージ。他にも取材とか打ち合わせとか。向こうのテレビにも出させていただきました。

東京と秋田のお客さんの違いは?

ササキ:最初は全然違うかもと思ってたんですけど、最終的にはそんなに違くないのかもって思いました。

――というのは?

ササキ:お笑いライブとかに触れる機会が、やっぱり秋田の方が少ないじゃないですか。なので「いきなりこんな(わかりにくい)ネタやってもウケないだろう」って考えてたんですけど。単独ライブのときに、東京でやってたネタそのままやったんですね。そしたらその評判がすごくよくて。

――なるほど。

ササキ:ちゃんとした環境があれば、面白いものであればウケるっていうのは感じました。

――しかし、秋田弁のネタは受け取り方が違うのでは?

ササキ:東京でやってるときは『何言ってるかわからない』笑いなんですけど、秋田の場合は『おじいちゃんおばあちゃんが言ってた』あるあるネタになるんですよね。

せじも:店名を秋田弁にするっていうのがあって。『いきなりステーキ』は『せばまず肉』みたいな。そのなかで『東急ハンズ』は『アマノ』に変換されるんです。

ササキ:『アマノ』っていうのは秋田にあるホームセンターなんですけど。東京でやった場合は当然、東京の人は『アマノ』がわからないんで、お客さんがきょとんとするんです。それで「あれ? 今日秋田の人いない? 秋田だったら大爆笑ですよ」ってネタなんです。

せじも:そんなこと言ってるのに、実はそのネタを秋田ではやったことがなくて。で、実際秋田でやったら、大爆笑でした(笑)。

――逆に秋田の人は『東急ハンズ』を知ってるんですか?

ササキ:知ってます知ってます。東京行ったことなくてもテレビで見たりしますから。

(秋田で稲刈り)

半分秋田、半分東京

ササキ:半分秋田、半分東京、の割合でやっていきたいですね。単独ライブを経て、秋田にもっとお笑いライブがあったらいいなって思うようになりました。そのためには東京でやってるライブを大事にしないと。東京でやってるお笑いライブを秋田の人に伝えたいんで。

――そうなんですね。

ササキ:単独ライブ終わってから、年末年始くらいまで、毎週秋田に呼んでもらってました。

せじも:秋田でたくさん横の繋がりができたんで。市役所とか商工会の人たちとか。

ササキ:そんななか毎回往復するのは大変だから、今年の4月から、毎月月末の1週間は必ず秋田にいるってことにしたんです。

せじも:僕ら出身が潟上市ってとこなんですけど、そこに改めて部屋を借りて。『ねじハウス』って名前で。

――SNSでもよく発信していますよね。

せじも:グーグルマップにも載ってます(笑)。『ねじハウス』で検索したら出てきちゃうんです。

ササキ:それで、お米を作ろうっていうプロジェクトも始めて。

――『TOKIO』のような感じですね。

せじも:ホントに! ホントに『TOKIO』なんです。『リアルTOKIO』!

ササキ:『TOKIO』もリアルだから(笑)!

――(笑)

ササキ:でもこのご時勢で秋田に行けなくて。まず田植えに参加できなかったんですよね。本当にお米作って、収穫して、お酒も作ってって予定だったんですけどね……。コロナが明けるのを待つしかないです。

せじも:出来た際には『ねじ米』って名前で売り出そうと思ってるんで、よろしくお願いします!


秋田がイヤで東京に出てきて、東京にいたからこそ秋田のよさを知る。似たような経験は誰しもあると思います。しかし、その過程はすごく重要で、最初から秋田を推して秋田を活かそうとなっていたら、同じ結果は生まれなかったのではないだろうか? ねじのコーヒーブレイク・インタビュー、後編へ続く!(8月14日更新予定)